【自分と世界の繋がり4】~水って誰のものだっけ?編~
- 国内 フォト
- 2021年6月2日
- 読了時間: 5分

【目次】
1.改めて、水って大事だな
みなさん、地球の表面積のうち、海が占める割合は?
・・・・・・・約70%ですね。
では私たちヒトの体内(成人)で、水分が占める割合は?
・・・・・・・約60~65%です。ここから20%の水分が失われると、私たちはもう生きることができません。
食べ物を口にしなくとも2~3週間は持つけれど、水を一滴も飲まなければ4~5日で死に至る、と聞いたことがあると思います。
2.21世紀は水の時代?急成長する「水ビジネス」
そうです。
「水」は私たちの命に欠けてはならないものと言えるでしょう。
そして「水」は現在、エネルギーや食料と並んで、ビジネスの主要なターゲットとなっています。ガガーリンが「地球は青かった」と言ったように、地球には水がこれでもか!というほどある気がしますよね。しかし実際に地表面にあってすぐに使える水資源は、わずか約0.01%しかないのです(国土交通省 土地・水資源局水資源部)。この限られた資源をめぐり世界では水ビジネス[1]が注目されています。その市場規模は2007年の36.2兆円から2025年には86.5兆円にまで成長すると見込まれています(国土交通省 土地・水資源局水資源部)。
3.「水メジャー」とヴェオリア
海外では水ビジネスを国策として行っており、特にフランスが中心となっています。ヴェオリア(仏)、スエズ(仏)、テムズウォーター(英)の3社は世界の上下水道民営化市場の70~80%を握り、「水メジャー」と呼ばれていました(第264回技術サロン)。たとえばスエズ1社のみで日本の総人口に匹敵する給水人口を持っていました。
・・・持っていました。そうなんです。実はこの「水メジャー」ですが、現在ではヴェオリア一強になっているのです。というのも、2021年5月14日(つい先日ですね)にヴェオリアはスエズの買収に最終合意したことが発表されています(日本経済新聞)。
何このヴェオリアって…。
ヴェオリアの母体は1853年(フランス共和制の第二帝政時代ですね)にナポレオン3世の勅令により誕生しました。歴史があるわけですね。日本でも「2019年度は、69か所の浄水場運転、80か所の下水処理上運転、180自治体の料金徴収、999件の漏水調査受託」を行い、複数の日本企業も傘下に収めています[2]。細かい数字はわからないけれど、日本の水事情にフランスが一枚噛んでいるのは理解できると思います。
しかしながら、フランス国内でも今回のヴェオリアのスエズ買収により寡占化が進めば、水道代金の高騰が懸念されています。
4.シンガポールは「ウォーターハブ」に?
他の国はどうでしょうか。
お隣の中国は世界の主要な水供給企業20社のうち12社を占めています(YAHOO!JAPANニュース)。
シンガポールは、政府が250億円を出資し、世界の水研究・ビジネスの中心である「ウォーターハブ」になろうとしています(第264回技術サロン)。この動きの背景には、水資源を他国に頼った結果味わうことになった苦しい経験があります。というのも、かつてシンガポールは国内水需要の50%をマレーシアの輸入に頼っていました。しかし2011年にマレーシアが従来の100倍の料金での取引を主張したのです。それ以来、自国で水の確保を始め、自給率90%達成を目指しています。
5.「日本の水」は誰のもの?-宮崎県の事例-
さて、では日本はどうなのでしょう?
日本の水資源への関心は外国よりも(少なくとも上記の国々よりは)低いのではないでしょうか?日本は島国=水資源が豊富という印象が強いからかも知れませんね。
しかし、私たちが考える「水」は、本当に私たちの水なのでしょうか?もしくは、いつまで私たちの水でいられるのでしょうか??
先程も述べた通り、日本の水事情には外国が大きく関係しており、その度合も年々増してきています。
現在最も注目されているのは、宮崎県の例でしょう。同県では全国初となる、上水道、下水道、工業用水の3事業の運営権を民間企業に売却することが決定しています(日本経済新聞)。そのお相手とは・・・・・そうです、ヴェオリアです。2022年4月からの実施の見通しが立っています。
みなさんはこのような日本の姿勢をどのように捉えられますか?
6.限られている資源をいかに分配するか
私たちの命を保つために絶対になくてはならない「水」。
それでいて非常に限られている「水」。
そもそも、「水」は誰のものなのでしょうか?
これは水以外の資源についても言えることですよね。
どこに住んでいても、何歳であっても、何語を話していても、所得や出自に関係なく、すべての人が必要とする水です。
しかし「みんなのもの」といったところで解決されるものではありませんよね。
私たちはこの大切な資源をどのように分配し、使っていくのか、改めて考えていくべきだと思うのです。
本日も最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございます:)
記事へのカジュアルな感想や、あなたのご意見など、気軽にコメントをお寄せください!お待ちしています。
次回投稿もお楽しみに!!!!
執筆者:FEST TOKYO 11期国内フォトワーク事業部 高橋日向子


[註]
[1] 水ビジネスとは水に関するビジネス全般を指し、上下水処理場の設計、上下水道の運営、上下水処理 場の運営、上下水処理設備の販売、配管施設、ボトリングウォーターの販売、漏水診断、薬品、汚泥処 理など広範囲に及ぶ。(「水ビジネスの現状と課題-ヴェオリア社のビジネスモデルを中心に-」)
[参考]
エコノミストOnline、「世界最大の水メジャー誕生か、中国に食われるか、フランスで水道ビッグ2が敵対的買収で対立」
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20201228/se1/00m/020/003000d (最終閲覧:2021/05/26/14:29)
グローバルウォータ・ジャパン代表 吉村和就、第264回技術サロン『世界の水ビジネスの動向と日本の戦略』
国土交通省 土地・水資源局水資源部、「平成21年度版日本の水資源について」、第Ⅱ章、第1編、https://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/hakusyo/H21/2-1.pdf (最終閲覧:2021/06/02/18:27)
長沢伸也、今村彰啓、「水ビジネスの現状と課題-ヴェオリア社のビジネスモデルを中心に-」『早稲田大学WBS研究センター 早稲田国際経営研究』、(45)、2014年、139頁-148頁
日本経済新聞、「仏ヴェアリアがスエズ買収で合意 3兆4千億円」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR150CH0V10C21A5000000/ (最終閲覧:2021/05/26/14:34)
日本経済新聞、「宮崎県、水道3事業の運営権を売却へ 国内で初めて」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53458420X11C19A2EE8000/ (最終閲覧:2021/05/26/15:03)
YAHOO!JAPANニュース、「世界『3大水メジャー』がついに『一強』になった歩みと今後の展開や概念」
https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20210517-00238333/ (最終閲覧:2021/05/26/14:46)
近い将来では水を争って紛争が起こるとか、、、
水資源の多いように見える日本も関係ないとは言っていられないですよね!
食糧自給率の低い日本は、輸入品を通してたくさん国外で水を使っているはずですから、、、