福島第一原子力発電所事故とは??~実際に見学して感じたこと~
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- 2022年2月9日
- 読了時間: 6分

【目次】
1.はじめに
みなさんこんにちは。
2022年もあっという間に1か月が過ぎてしまいました。2021年はどんな年でしたか??昨年は東日本大震災から10年目という節目の年でした。また、2021年は福島第一原子力発電所事故からも10年目です。
今回は12月に福島第一原発に見学に行った際の学びを共有したいと思います!!
2.福島第一原子力発電所事故とは
ご存じの方も多いと思うのですが、改めて福島第一原子力発電所事故について説明したいと思います。福島第一原子力発電所事故とは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響で引き起こされた事故です。この事故は1986年4月26日に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故に相当する事故レベル7であると言われています。
3.原子力発電の仕組み
皆さんも夜に自転車に乗る際は、ライトをつけると思います。この自転車のライトは、ペダルを漕いだ時に生じる回転の力で点灯します。同じく原子力発電もこの回転の力を使っています。ですが、人がペダルで漕いでいるわけでは勿論ありません。原子力発電では、ウランの核分裂で発生する熱を燃料として回転の力を生じさせています。この核分裂で発生する熱は高温すぎるので、水で冷却する必要があります。さらに、水は放射線を遮ることができます。だから原子力発電所は水をすぐに供給できる海の近くにあるわけですね。

(水の中で保管される核燃料の様子)
冷却する必要があるほど熱エネルギーが大きいので回転する力もとても大きく、大量に発電することもできます。これは大きなメリットですね。しかし、ウランを利用した原子力発電はメリットだけではありません。デメリットも多く含んでいます。デメリットの例として挙げられるものが下記の3つです。
健康面:原子力発電所で事故が発生した場合に地域住民が被ばくする可能性
環境面:放射線による汚染物質の発生
経済面:放置するしか手段がない「核のゴミ」にかかる費用
実際に2011年の福島第一原子力発電所事故の際には、これらのデメリットが顕著に現れました。事故の結果、避難を余儀なくされた地域住民が被ばくする可能性にさらされ、放射線を含んでいる汚染水の一部が海に流出しました。さらには、10年たった現在もこの汚染水や除染土をはじめとした「核のゴミ」の最終処分方法が大きな問題として残っています。下の写真の汚染水をためているタンクも今年中に満杯になってしまうそうです。

(汚染水をためているタンク)
4. 当時の福島第一原子力発電所
福島第一原子力発電所には、1号機~6号機の原子炉があります。この6つの原子炉の中で、当時の福島第一原子力発電所は1号機~3号機までが稼働していました。つまり、実際に発電をしていたため、核燃料から熱エネルギーが大量に発生していたということです。そのため、1号機~3号機で甚大な被害が出てしまいました。それに加えて、定期検査中だった4号機でも大きな被害が出ました。この違いが起きたのはなぜでしょうか。そこで、この1号機~4号機それぞれの当時の状況を見ていきたいと思います。
【1号機】
まず1号機は地震と津波の影響によって、すべての電源を失ってしまいました。その結果、高熱の核燃料を冷やすための水が供給できなくなってしまいました。つまり、核燃料の熱はどんどん上がってしまいます。核燃料の熱が上がり、最終的にはこの熱が内部の水蒸気に反応して水素爆発を起こしました。津波襲来から約24時間後の3月12日午後3時36分でした。現在の1号機では、この際に生じた、溶けた核燃料の取り出しが目指されています。しかし、1号機だけは放射線量が多すぎるために溶けた核燃料の発見もできていません。

(被害の大きかった1号機)
【2号機】
2号機も1号機とほぼ同様に地震と津波の影響で電源を失ってしまいました。しかし、2号機は原子炉隔離時冷却系という緊急時の冷却機能が作動したことで、3日間は注水を継続することができました。この時間で電源確保のための電源車や注水作業のための消防車を使い、復旧を目指しました。けれども、1号機や3号機の水素爆発で電源車や消防車は破損し、使用不能となってしまいました。そして最終的には2号機においても水素が発生し始めますが、2号機は水素爆発しませんでした。これは1号機の水素爆発で2号機の一部が破損し、水素が外部に排出されたからであると考えられています。
【3号機】
3号機も2号機と同様に地震や津波の影響で電源を失いましたが、原子炉隔離時冷却系などによって冷却が続けられていました。しかし、その後の作業が難航し、3号機も水素爆発を起こしてしまいました。3号機の詳細については、4号機の部分で説明します。

(左から2号機と3号機)
【4号機】
4号機は前述の通り、事故当時は稼働していませんでした。そのため、他の原子炉と同様に電源を失っても、ある程度の期間は大きな問題ないと予想されていました。しかし、4号機は水素爆発を起こしてしまいます。これは3号機が影響していると考えられています。水素爆発前の3号機では「ベント」という作業が行われていました。ベントとは簡単に説明すると水素爆発を起こさないために水蒸気を外に排出することです。このベントは3号機の水素爆発を防ぐために実施されましたが、想定外に3号機と4号機をつなぐ配管にも水蒸気を流入させてしまいました。その結果、事故当時は稼働していなかった4号機でも水素爆発を引き起こしてしまいました。

(廃炉が進む6号機のベント)
5.見学の感想
今回の見学で考えさせられたことは2つあります。1つ目は「選択肢が1つしかない問題のつらさ」です。私はNGO FEST TOKYOで国際協力の活動をしています。国際協力の活動においては、正解や答えがない中で最良の国際協力を目指してプロジェクトを計画しています。そのため、うまくいかないこともあるのですが、成功するまで様々な手段を考え、実行することができます。しかし、問題の中には「核のゴミ」の問題のように放置するという1つの手段しか選べない問題もあります。このように解決したくても解決できない問題のつらさを間近で見たことは大きな経験になったと思います。
2つ目は「見えない放射線」です。実際に見学する中で1号機を見たときは衝撃を強く受けました。しかし、放射線は目に見えないため、本当に放射線濃度が高い危険な場所である実感が湧きませんでした。このように多くの人が放射線の危険性を実感できないから、原子力発電の問題は終わらないのではないかと考えました。そこで、放射線を1つのかたちで可視化できるようにすることが問題解決の一歩であると思います。

(廃炉が進む6号機の内部)
6.今後できること
現在、アジアの国々を中心に産業化を目指し、原子力発電を取り入れる国が出てきています。例えば、昨年はカザフスタンで原子力発電所の必要性を強調する声が上がりました。これに対して、福島第一原子力発電所事故を経験した日本は、原子力発電所の危険性を示していく必要があります。しかし、現在も日本は9基の原子力発電所を稼働しています。これでは、説得力もなく、同じことを繰り返すことになってしまいます。そこで、今後は1人1人が原子力発電をはじめとした社会問題に強い問題意識を持つことが必要になってくると思います。ぜひ改めて原子力発電をはじめとした社会問題を考えてみてください!!
最後まで記事をご覧いただきありがとうございました。いいね♡やコメントなどをいただけると大変嬉しいです!「こんな記事読みたい!」「このテーマ扱って欲しい!」などのアイディアも大歓迎です。
では次回の記事もお楽しみに~
執筆者:FEST TOKYO 12期海外事業部長 木村 颯志
<参考文献>
TEPCO:廃炉プロジェクト|福島への責任|東京電力ホールディングス株式会社 (tepco.co.jp)
JETRO:https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/09/006425a39235f015.html


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