電気自動車って本当にエコ?
- 国内 フォト
- 2021年6月30日
- 読了時間: 4分

【目次】
1.電気自動車は地球に優しい?
「電気自動車って本当にエコなの?」
「電気自動車が増えるとどんな影響がある?」
ガソリンを使わず、電気を燃料とする電気自動車(以下EV)。走行時のCO2の排出量を削減できる事から、環境に優しいエコな製品として通年話題になっています。
直近だと、トヨタ自動車が、2030年にEVの世界販売台数を800万台程度とする新たな目標を発表した事が記憶に新しいのではないでしょうか。
しかし、本当にEVは人を取り巻く地球環境に優しい製品なのでしょうか?
2.そもそものエコの定義
本題に入る前に、そもそも「エコ」の定義ってなんでしょう?
もともとの語源は、エコロジー(ecology)だそう。
エコロジーとは、生態学という意味で、生物と環境との関わりあいを指し、「環境にいい」という意味につながっています。
他方で、「エコ」はエコノミー(economy)のエコとも言われています。
エコノミーとは経済のこと。
環境と経済はつながっていて、どちらか一方だけが発展してもうまくいかない。環境問題をグローバルに解決していく事で、世界の経済も発展し、人びとがより安全で豊かな生活を送れるように、という想いが込められているのではないでしょうか。
これらをまとめると、エコとは、生物を取り巻く環境と経済に配慮した活動であり、双方の両立によってエコが成り立っていることが分かります。
3.EV製造時のCO2排出量、実はガソリン車の2倍を超え る!
EVは、ガソリン車に比べて走行中のCO2の排出量を減らせるからエコ、という話がありますが、製造中のCO2の排出量に着目するとどうでしょう?
たとえば、マツダの研究者などが関わった論文のデータによると、製造時のCO2排出量はガソリン車に対して、EVは2倍~2.5倍になるという試算結果が明らかになっています。
同様の数字はフォルクスワーゲンも発表しており、走行中と製造中のCO2排出量を考慮すると、ガソリン車とさほど変わらない、またはEV車の方が総合的に排出量が多くなってしまう可能性も考えられる、と指摘されています。
4.燃料電池であるレアメタルに潜む、人権問題
EVの燃料として知られる「リチウムイオンバッテリー」には、ニッケルやコバルトなどのレアメタルが使用されています。
しかし、コバルトの主要な産地として知られ、世界の産出量の6割を占めるコンゴ民主共和国では、鉱山での過酷な労働環境が深刻な問題となっています。
多くの子どもを含む労働者たちが、落盤や窒息事故が相次ぐ危険な状況下での採掘に従事しており、現場で適切な安全対策がほとんどなされておらず、低賃金・長時間労働で働かされているという現状も。
国の主要な収入源でありながら、労働者の命の危険と引き換えに得られるコバルトは、別名「血のダイヤモンド」と呼ばれています。
このように、EVのエネルギーとなる資源が採掘される国は、貧しい人が窮地に陥りやすく、安全と安定した暮らしが守られない劣悪な環境下で働かされている現状があります。
レアメタルのニーズが高くなり、供給量が増えれば、数少ない資源保有国への輸入依存は高まり、労働者の人権侵害を助長させてしまう可能性があるのです。
5.何をもって「エコ」なのか、自分で見極めよう
走行時のCO2の排出量を削減する「エコ」な製品だと言われている電気自動車。
特に近年は、世界で「脱炭素」の動きが加速する中で、CO2の排出が少ない電動化への切り替えが進んでいます。
しかし、「本当にCO2の排出量は減らせるのか」、「電気自動車の供給が高まった時に起こる、経済・社会的な問題は何か」を、見極める必要があるのではないでしょうか?
私たちの暮らしに関わる資源が、どこでどのように生産されているのか、その背景を考えなければならないと思うのです。
簡単な記事の感想や、あなたの意見など、気軽にコメントをお寄せください!
お待ちしています。
次回投稿もお楽しみに:)
執筆者:FEST TOKYO 11期事業局長 石上栞菜


[参考]
朝日新聞デジタル、「トヨタ、2030年に電動車800万台へ「脱炭素」加速」https://www.asahi.com/articles/ASP5D4J5CP5DOIPE00M.html(最終閲覧:2021/06/28/)
Gakkenキッズネット、「エコとはどういう意味ですか?」https://kids.gakken.co.jp/kagaku/eco110/ecology0156/(最終閲覧:2021/06/28/)
山本晋也、「EV製造時のCO2排出量はエンジン車の2倍以上! それでも電動化を促進すべき理由とは」WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2021/01/639410/2/ (最終閲覧:2021/06/28/)
SDGs総研、「コンゴ 需要急増のリチウムイオン電池、脱炭素化の陰に潜む児童労働」https://www.sdg-s.jp/column/responsibility/3621/(最終閲覧:2021/06/28/)
EV車の製造過程でどれほどのCO2が出されるかは、つくられる場所によっても異なると聞いたことがあります。
安価な労働力のもとでEV車を産み出そうとすれば、それだけ環境に与えるダメージは大きくなるということでしょうね。
「使う」ときだけではなくて、「作る」ときにも環境に配慮したいですね!