『東日本大震災から10年経過した今』
- 国内 フォト
- 2021年3月17日
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4万人。
突然ですが、この数は一体何を表していると思いますか?
これは現在の東日本大震災における避難者の数を表しています。
先日東日本大震災から10年が経過し、報道でも被災地の復興や復興に向けた取り組み、被災地・被災者への応援の声、被災者の声を聞くことが多かったのではないかと思います。そのような中で10年が経過した現在でも避難し続ける人が約4万人にも上ります。
この中には福島第一原発事故により、今もなお帰宅困難区域に指定されて故郷から離れざるを得ない方もいます。今回のような原発事故であったり戦時中に日本に原爆が2度も投下された歴史が日本にはあり原子力による被害は甚大であるのにもかかわらず日本は、アメリカ、フランスに次いで3番目に原発数が多い国家となっています。なぜこれまでに原子力の脅威を目の当たりにしながら日本には今も原子力による発電所が稼働し続けているのでしょうか。
原発が日本に導入された背景には日本の戦後復興がありました。戦後日本は原子力投下により大きな被害を受けて原子力に反対する意見が多かったものの、戦後復興が進むにつれて電力不足が課題となりました。その為アメリカ大統領による「原子力の平和利用」が唱えられたことで、原子力が日本にアメリカ協力のもと導入されるようになったのです。そして徐々に政府による原発の建設が進んだものの、住民による建設反対が多かったため、政府は建設場所を確保するために発電所の受け入れを行った自治体に対して補助金を交付しました。こうして当時財政難であった地方自治体では原子力発電所が作られるようになりました。ここには、原発導入の際の”戦後復興が間もなく国力の乏しかった日本”と”戦勝国であり世界経済を牽引していたアメリカ”、の対等でない関係。また原発建設の際の”財政難であった地方自治体”と”民間に比べて財力のある日本政府”の対等でない関係があります。これらのような対等でない関係は相手の財力といった力の弱みに漬け込んで相手に不都合な内容を飲み込んでもらおうとしたようにも見えます。このような戦勝国による敗戦国への不条理や政府による民間への弾圧・規制は世界で過去においても現在においても多く起こっています。不平等な関係による不条理は現在日本に被害を繰り返し及ぼしながらも原子力が存在し続けている現状を生み出している一つの原因なのではないかと思います。
また原子力が日本に稼働し続ける訳には原子力発電は安定してエネルギーを供給できる上に燃料費が安いという利点があります。また発電時に二酸化炭素を排出しないため環境保全になると言われています。しかし実際は原子炉の起動・停止時に年間10万トンもの二酸化炭素が排出されています。また大量の熱を排出するため建設は海沿いで民家に離れた場所、つまり生物にとって生息するのに良好な環境で行われ、その地は開拓されコンクリートで埋められてしまいます。私たちが普段何気なく使っている電気が安定していて低コストなのにはこうした発電所の建設を余儀なくされた住民や自治体、動植物の犠牲があるからなのかもしれません。
これらのように、今もなお原子力が日本で利用されている理由には他にも様々な国内外での関係や歴史、原子力の特徴があります。原発事故等がある中で脱原発が日本の目指すべきところとする風潮が強まりつつあるものの、安い安定した電気による豊かな暮らしを享受して、これからも享受し続けたいという思いがある限り脱原発を日本で実行することは難しいことかもしれません。また電気という生活必需品が高額になってしまえば、生活困窮者はより生活が困難になり、貧困という課題を深刻化させてしまいます。しかしこのまま原子力を使い続ければ、地震の多い日本は東日本大震災のような地震で原発事故が起こり、故郷を失う人が今後も生まれてしまったり、発電所の建設や稼働によって地球温暖化が進み異常気象による作物の不作で食品の高騰や食糧不足、また発電所稼働による汚染水を海洋放出することで魚へそして人体への悪影響といった課題が私たちに近い将来降りかかるかもしれません。実際フィンランドでは廃棄物処理のためにオンカロという地下に処理場を作るために多額の資金を投資したりして放射性廃棄物の処理問題に直面していたり、日本では汚染水の処理問題に直面しており、すでに原子力の課題は私たちに影響を与えつつあります。
電気が安く安定して使えるのには原子力発電所建設を受け入れなければならない住民や自治体、動植物の犠牲があるのかもしれないしれないように、比較的私たちが豊かに暮らせるのには誰かの犠牲があるからなのでしょうか。原子力発電所に限らずファストファッションやダイヤモンド、プラスチックにも背景には、重労働を強いられている人や子供、ゴミや汚染による住まい・すみかを追われる人や動物などの多くの犠牲があるはずです。
【参考文献】
復興庁(20210226_kouhou1.pdf (reconstruction.go.jp)(2021年3月12日現在)
福島民友新聞社 県内ニュース(https://www.minyu-net.com/news/sinsai/saihen.php)(2021年3月12日現在)
『今後の日本の原子力発電所』大重岬、大河内康正(https://kumamoto-nct.ac.jp/file/knct-kiyou-2013/pdf/no14.pdf)(2021年3月12日現在)
『原子力発電所は廃止すべきか』岸良大地 (http://www.shigakukan.ac.jp/information/upload/kishira.pdf)(2021年3月12日現在)
『日本における脱原発の実現に向けて』佐藤 裕介 (https://www.keiwa-c.ac.jp/wp-content/uploads/2014/10/veritas21-03.pdf)(2021年3月12日現在)
『汚染水問題の行方は?事故10年目の福島第一原発』東京新聞(https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1328)(2021年3月15日現在)
『フィンランドの放射性廃棄物最終処分場「オンカロ」』2016年6月16日 AFP BB News(https://www.afpbb.com/articles/-/3090649(2021年3月15日現在)
学生国際協力NGO FEST TOKYO
国内フォトワーク事業部 伊藤 結奈

この記事を読み、身の回りにある安価なものや便利なものの背景に、見え辛い犠牲が多く潜んでいることを痛感させられました。今後の教訓として、この事実を忘れずに生きていきたいです。