防災に関する国際社会の取り組みと課題
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- 2021年3月10日
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更新日:2021年3月10日

先週の金曜日、ニュージーランド沖でM8.1の地震が発生しました。太平洋の広い範囲で津波が観測されましたが人的被害は確認されていません。少し遡ると2004年12月26日、インドネシアのスマトラ島沖ではさらに規模の大きいM9.0の地震が発生しました。被害に関しては、死者: 126,732人、行方不明者: 93,652人[i]とされていて、この地震によって発生した津波により多くの方が犠牲になりました。インドネシアのみならず世界中で様々な災害が発生していますが、アジア地域はとりわけ災害が多いです。そのため国際社会では、災害後の支援のあり方や被災国の支援の受け入れ方など多くのこと[ii]が議論されていきました。今日では、災害救援の最も有効な方法の一つとして「災害多発国自身が対応能力を強化する」ことが挙げられます。国際社会もこのような努力を支援する方向に動いています。
この動きによって、国連を中心に災害リスクの軽減のための方策が話し合われ、(from response to preparedness)つまり、事後的な対応から事前の準備へという概念が広まりました。2005年1月に神戸で開催された第2回国連防災世界会議[iii]では、国際防災協力の意識や2002年の「ヨハネスブルク宣言[iv]」をさらに一歩推し進め、防災協力の重要性を強く訴えた「兵庫宣言[v]」が採択されました。この兵庫宣言を具体化するための行動指針として取りまとめられたものが「兵庫行動枠組2005-2015[vi]」です。この枠組みは「HFA」と略称されています。
HFAの実施具体例としてインドネシアでは2007年に災害管理に関する法律を制定しました。2008年には国と州のレベルで常設の行政機関(国家防災庁=BNPB)が設立されています。こうして、一元的に災害に対応する組織が作られたのです。HFAを推進する動きは国のみならず、地域協力に発展しています。自然災害の多いアジアでは、ASEANメンバー国(10か国)が当該地域の災害管理体制を強化するため、ASEAN防災緊急対応協定(AADMER)を締結しました。この合意を受けて、第15回ASEAN防災委員会(ACDM)にて、「AADMERワークプログラム」が採択されました。内容に関しては、災害リスクの特定、災害への事前準備などの項目が含まれています。このように、国際社会では、防災に関する準備が着々と進められています。しかし、いくら枠組み・対策案が完成したとしても、それを実現するのは難しい部分があるように感じます。
その最たる例として、2018年に発生したインドネシア地震が挙げられます。2018年9月28日に、インドネシアのスラウェシ島で地震が発生し、再び津波による被害が発生しました。インドネシアではインド洋津波を受けて、各国の支援により津波の早期警戒システムが構築されていましたが、この地震が発生した際にそれが全く機能していなかったことが分かりました。津波が来たら、それをすぐに感知するような「ブイ」という装置をあちこちに置いていたのですが、それが盗難や破損の被害にあい、しっかりと管理されていなかったのです。このような出来事をなくすためには、支援される国の能力や事情をしっかりと吟味したうえでのサポートや対策が必要なのではないかと考えます。災害支援のみならず、国際協力をするうえで考えなければならないことはたくさんあります。ただし、そのどれもが欠けてはならない要素の1つであるとみなさんは感じませんか。
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[i]https://www.adrc.asia/view_disaster_jp.phpNationCode
=&Lang=jp&Key=789
[ii] 決議46/182など。
[iii] 第1回国連防災世界会議にて採択された「持続可能な経済成長は、災害に強い社会の構築と事前の準備による被害軽減なくしては達成できない」との基本認識、リスクアセスメントや災害予防、応急対応準備にかかる原則、西暦2000年及びそれ以降のための戦略、各レベルでの行動計画等を定めた「横浜戦略」の実施状況をレビューし、新しい防災指針を定めることなどを目的として開催されました。
[iv] 2002年9月2日から4日にかけて南アフリカ共和国・ヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界サミット」で採択された持続可能な開発に向けた各国首脳の政治的な意思を示す文書。持続可能な開発に関する世界サミットでは、持続可能な開発のための行動計画開発「アジェンダ21」の実施状況や新たな課題を検証している。自然災害の影響とその対策の必要性が、世界首脳レベルの会合で初めて強調されました。
[v] 開発と防災の関係を明確に示している。災害が開発効果を損ない、持続可能な開発と貧困撲滅にとって大きな障害となると同時に、災害リスクを適切に考慮しない開発が災害への脆弱性を増すことを明確にし、防災協力の重要性を強く訴えている。
[vi] 具体的な内容はこちらをご覧くださいhttp://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/sekaikaigi/01/pdf/
sankou_siryo_4.pdf
【参考資料】
池上彰『池上彰の世界の見方―東南アジア』小学館、2020
「大災害と国際協力」研究会『大災害に立ち向かう世界と日本』佐伯印刷、2013
BBCNEWS-Japan:インドネシア津波最悪のシナリオが現実に 参照月日2021年3月5日
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45715025
MIT Technology Review :インドネシア津波、高度警報システム整備も財源不足で
機能せず参照月日2021年3月5日
https://www.technologyreview.jp/nl/indonesia-had-an-advanced-early-warning-system-but-it-wasnt-working-when-the-tsunami-struck/
学生国際協力NGO
国内フォトワーク事業部 三好 大晴

ここ最近では、地球温暖化をはじめとする異常気象の深刻化が非常に大きな問題となっているように思います。これによって自然災害も今後どんどん増えていくでしょうし、地震大国である日本人にとっては特に大事な観点ですね。