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『南北問題ってなに?私たちにできることはあるの?』

昨今テレビや新聞でも聞くことの多い「南北問題」という単語ですが、その意味を詳しく知っている人は意外と多くはないと思います。この記事では、南北問題の意味や現状、原因から、それに対して私たちができることまで、南北問題に関するすべてを分かりやすくまとめて解説します。



そもそも南北問題とはどのような問題のことを指すのでしょう?ひとことで言うと、「発展途上国と先進国の間の経済的な格差、およびそこから生まれる教育、政治、食糧などに関する諸問題」です。この用語は、当時イギリスのロイズ銀行会長であったオリヴァー・フランクスが、1959年にアメリカで行った講演の内容に端を発しています。彼は、当時大きな国際的課題であったイデオロギーおよび軍事面での世界規模の対立、すなわち東西問題と双璧をなすものとして、この南北問題を提起しました。



さて、この演説から60年以上が経ったいま、南北問題は解消されているのでしょうか?答えはずばり、ノーです。2014年、世界銀行が定める国際貧困ラインである1日1.9ドル未満で生活している人の割合は、「東アジア・太平洋諸国」で2.66%、「ヨーロッパ・中央アジア」で1.80%であるのに対し、「南アジア」では15.18%、「サブサハラアフリカ」では42.29%と相対的にかなり高い数値となっています。世界の貧困人口の85%以上が「南アジア」と「サブサハラアフリカ」に集中しているのが現状です。また、経済的な格差は他の分野の格差も生んでいます。例えば教育分野。2019年の15~24歳の男子の識字率は、「東アジア・太平洋諸国」で99%、「ヨーロッパ・中央アジア」で100%であるのに対し、「南アジア」では80%、「サブサハラアフリカ」では72%にとどまっています。



では、なぜこのような格差が生まれてしまったのか、その原因と背景を見ていきます。原因としてまず1つ考えられるのは、植民地としての歴史です。現在の発展途上国の多くは過去に植民地支配を受けていた歴史があり、建築や食文化などに当時の宗主国の影響が色濃く反映されて現在でもその名残が認められる国もあります。植民地になった国は宗主国の資源の供給地としての役割を担わされ、特定の一次産品の生産と輸出に依存したモノカルチャー経済へと転換させられるケースがほとんどです。こうした経済構造を持つ国は工業化や技術革新の波に乗ることができず、格差は固定化されるどころかさらに拡大していきました。さらにもう1つ挙げられるのが、発展途上国における急激な人口増加です。世界の総人口に占める先進国の人口の割合は、1950年の32.3%から2000年には19.6%に低下しているのに対し、発展途上国の割合は67.7%から80.4%に上昇しています。このような人口爆発に国の経済成長はついていくことができず、最後には資源枯渇と環境破壊、そして食糧不足を引き起こしたのです。



ここまで南北問題の意味や現状、背景を解説しましたが、最後に、この問題に対して一日本人である私たちが何かできることはないのか、ということを考えていきます。先に述べたように、南北問題は歴史や経済構造という各国の根本的な事情に由来するものであり、正直なところ、一個人が何かはたらきかけたところで一朝一夕に解決するものではありません。しかし、一人一人がこの問題に対する理解を深め、その解決に向けて日本あるいは日本人がどのような役割を果たすべきか考えることは大切なことです。実際に日本は南北問題に対して、ODA(政府開発援助)という形でこれまで対策を講じてきました。「魚を与える」と例えられる欧米の即物的な支援に対し、日本の支援は「魚のとり方を教える」と例えられるように、派手さはないものの継続的に効果を発揮し続けるもので、国際社会からも高い評価を得ています。日本人一人一人が自分たちにできることについて考えを巡らせることは、必ず問題解決への糸口となるでしょう。



【参考文献】
・ボランティアプラットフォーム『南北問題』https://volunteer-platform.org/words/politics-economy-treaties/north-south-divide/(2021年3月22日アクセス)
・堀中浩(1978)『南北問題の展開と新国際経済秩序について』明大商學論叢 60(6): 35-56 https://core.ac.uk/download/pdf/59297367.pdf
・リベラルアーツガイド(2020)『【南北問題とは】意味・原因・現状・対策をわかりやすく解説』https://liberal-arts-guide.com/north-south-divide/(2021年3月22日アクセス)


学生国際協力NGO FEST TOKYO

国内フォトワーク事業部 古川 康太


 
 
 

1 Comment


さらま
さらま
Apr 09, 2021

社会課題が発生する背景に触れると、私は自分の無力さを感じずにはいられません。70億人の内の一人である自分に出来ることなど、本当に微々たるものです。しかし行動が無意味だとは思いません。誰も行動しなければ世の中が変わる可能性はゼロですが、誰かがそこに挑戦する限り、たとえ些細であったとしても変わる可能性があるからです。うまくいく未来を想像するのは容易いことではありませんが、諦めずに挑戦し続けることの意味を考えさせられました。

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